北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2025年01月20日
(523)九井諒子展&「ダンジョン飯」迷宮探索展 「ラフ」に見る試行錯誤

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第523回
『西日本新聞』北九州版 2025年1月19(日)朝刊 22面掲載
九井諒子展&「ダンジョン飯」迷宮探索展
作品世界に浸り散策

 多くの方に楽しんでいただいている「九井諒子展&『ダンジョン飯』迷宮探索展」。見どころの一つは、これまでに発表された九井諒子先生による短編集や「ダンジョン飯」各巻の単行本表紙イラストの「ラフ」の展示です。

 ラフは素描や下書きとも言い換えられますが、「どの構図が映えるか」「どのポーズが一番印象的か」など、完成形のイメージを固めるために大まかに描かれるものを指します。つまりラフとは、より良い作品に仕上げるための試行錯誤やブラッシュアップの過程―。創作の舞台裏を感じられる興味深い資料なのです。

 漫画家はラフを基に編集者やデザイナーと協議し、作品の“顔”となる表紙を作り上げていくわけですが、実際に短編集について紹介しているエリアでは、編集者やデザイナーから提示されたテーマを、九井先生が徐々に形にしていく様子が明らかになっています。

 また圧巻なのは、「ダンジョン飯」第1巻表紙のためのラフ。なんと10種類を超える案が作られているのです。いずれも凝った構図を取っていたりユーモアが散りばめられていたり、ワクワクするデザインですが、最終的には主人公がフライパンを持って、舞台であるダンジョンにたたずんでいる構成が採用されました。本作がどういう物語か大筋を伝えるとともに、なんとも興味を惹かれるデザインになっており、シリーズの幕開けにふさわしい表紙が完成しています。

 漫画家の仕事はお話作りや作画以外にもあり、常に想像力が求められることを伝える本展。試行錯誤の軌跡に、ぜひご注目ください。

(学芸員・石井茜)

=LINK=

「九井諒子展&『ダンジョン飯』迷宮探索展」の詳細はこちら