北九州漫画ミュージアム

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2025年03月19日
(531)児童まんが、太田じろう原画展 懐かしくかわいい動物たち

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★
連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第531回
『西日本新聞』北九州版 2025年3月16日(日)朝刊 22面掲載
児童まんが、太田じろう原画展
懐かしくかわいい動物たち

 小学校低学年くらいまでの子どもに向けた、いわゆる「児童まんが」は戦前から数多く描かれていましたが、第2次世界大戦末期においては物資の不足からほとんど出版されなくなりました。

 戦後は一転して、子どもたちの娯楽を求める心を反映し、児童まんがの百花繚乱とも言うべき時代を迎えます。復刊あるいは新創刊された幼年誌・学年誌でも、読者の人気に後押しされる形で次第にまんがが数多く掲載されるようになりました。

 教育的かつ良心的な作風が基本となる児童まんがの世界において、一世を風靡したのが太田じろう(1923-82)です。

 彼が58年から64年にかけて発表した「こりすのぽっこ(のちに「こりすのぽっこちゃん」に改題)」は、動物たちをかわいらしく擬人化した作品で、街の人々の仕事をお手伝いしたり、友達と仲良く遊んだり、主人公であるぽっこちゃんのはつらつとした毎日を柔らかな色彩で描きました。本作の人形劇がテレビで放送されるなど、その人気は大きなものでしたが、現在その名を知る人は限られます。

 太田じろうを一言で表すならば「とてつもなく絵のうまい作家」。キュートな魅力を持つキャラクターや、優しくユーモアあふれる物語を支えるのは、圧倒的な画力です。確かなデッサン力に裏付けられた的確で巧みなデフォルメ、説得力のある背景、立体的な構図など、見れば見るほどその表現力に気付かされます。

 この春、漫画ミュージアムで開催する原画展では、かわいらしく、そしてただかわいいだけではない太田じろうの世界を紹介します。ぜひご覧ください。

(学芸員・石井茜)

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