北九州漫画ミュージアム

ひとことブログ

2020年10月23日
(323)仏の漫画家ピコーさんの「クレール」 慣習や行為がはらむ差別

★過去記事のアーカイブ掲載になります。各種情報は新聞掲載時点のものです。★

連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第323回
『西日本新聞』北九州版 2020年10月22日(木)朝刊 19面掲載

仏の漫画家ピコーさんの「クレール」
慣習や行為がはらむ差別

  明後日24日、北九州市漫画ミュージアムも共催のオンライントークショーが開催されます。このイベントは、フランスで人気のBD(=欧州式の漫画)作家オード・ピコーさんと、リアルな人物描写で人気の漫画家・鳥飼茜さんをゲストに、フランスと日本をリアルタイムでつなぎ対談をしてもらう特別企画。You Tube生配信ですので、どなたでも無料でご覧いただけます。

 さて、鳥飼さんはご存知の方も多いと思いますので、今回はフランスのゲスト、オード・ピコーさんをご紹介しましょう。1979年フランスに生まれた彼女は、装飾美術を学ぶ傍らBDを描きはじめました。大人向けのBDのほかに、若年層向けに絵本なども発表するなど、幅広い読者に支持されています。

 ぜひ読んでほしいのは、邦訳出版もされた『クレール パリの女の子が探す「幸せ」な「普通」の日々』(DU BOOKS)。この作品は、運命的なパートナーと出会い、幸せな生活を送りたいと願う30代の女性・クレールの日常をシンプルでかわいらしい絵柄と明るい色彩で描いたもの。ほのぼの日常系漫画かと思いきや、読み進めるうちに彼女の周辺に潜む「見えないプレッシャー」や「女性の葛藤や選択」が見えてきます。

 考えるべきは、ここに描かれるクレールの日常が、私たちが普段過ごしている風景そのものであったということ。当たり前すぎて誰もが見過ごしてしまう出来事を改めて取り上げることで、ピコーさんはその慣習や行為が多くの差別や問題をはらんでいることを提起しました。この物語の舞台はフランスですが、クレールが抱える問題には国境はありません。きっとあなたの心にも刺さること間違いなし!気になる方はまず対談をチェックしてみて! 

(図書担当・田中千尋)

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