2021年02月04日
(335)横手市増田まんが美術館 マンガ原画保存の最前線
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連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第335回
『西日本新聞』北九州版 2021年1月28日(木)朝刊 17面掲載
横手市増田まんが美術館 マンガ原画保存の最前線
マンガ家が心血を注いで描き上げた、かけがえのない「原画」。多くは作家本人やその家族が大切に保管していますが、なにぶん量が多く、大きな負担となっています。週刊マンガ誌の連載作家で言えば1年に1600枚ほどの原画を描く計算で、ベテランだと数万点の規模に。美術館や博物館での保存も進められていますが、全体量の多さに追いついていないのが現状です。
北九州市漫画ミュージアムでは、国友やすゆき・神江(こうえ)里見・関谷ひさし・畑中純・陸奥A子の原画を収蔵し、総計10万点。館内の収蔵庫で保管して、少しずつ整理を進めています。さる1月20日、マンガ原画保存の現状と今後の可能性をテーマに、公開講座を行いました。北九州市立大学文学部「北九大文化資源調査隊」の主催で、横手市増田まんが美術館(秋田県)と当館が共催し、この2館の詳しい報告を行ったものです。
横手市増田まんが美術館は、日本初のマンガ専門美術館として1995年に開館。2019年にリニューアルし、原画70万点収蔵可能な「マンガの蔵」を開設しました。地元出身の矢口高雄を筆頭に、小島剛夕(ごうせき)、高橋よしひろ、さいとう・たかを、浦沢直樹など現在の総数は40万点。地元企業によるグッズ開発や美術館周辺での連動イベントなど、収蔵資料を地域振興に活用し大きな経済効果を生んでいます。
講座はインターネット上で開催され、80名余りの参加者から質問や感想が活発に寄せられました。マンガ自体にふれる機会は多くとも、原画を美術館でどう保存し活用しているかは知られておらず、新鮮な驚きがあったようです。当館では今後とも情報発信に努めていきます。
(専門研究員・表智之)
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■横手市増田まんが美術館