2022年01月26日
(374)高橋葉介原画展 毛筆で描く怪奇と幻想
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連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第374回
『西日本新聞』北九州版 2022年1月23日(日)朝刊 14面掲載
高橋葉介原画展
毛筆で描く怪奇と幻想
紙とペンさえあればどんな壮大な物語も描くことができるのが、マンガの最大の利点だとよく言われます。小説よりも直感的に理解しやすく、実写映像やアニメーションより人手も経費もかからないなど、他の物語メディアと比べて確かに有利ではありますが、それはもちろん、作家の非凡な発想と技術があればこそ。
高橋葉介は、大学在学中の1977年にデビューして以来、マンガの利点を最大限に活かし、「夢幻紳士」シリーズなど奇想あふれる作品で熱狂的に支持される作家です。怪奇と幻想が持ち味で、亡霊や妖怪を好んで描きますが、生々しさよりは美しさや可愛らしさが際立つ絵柄で、ギャグも盛り込みながら、背筋が凍るような恐怖を生み出す。これが実写映像だったら、可愛さと笑いと恐怖を違和感なく詰め込むのにかなり苦労するでしょう。
マンガの場合、絵柄の工夫でそういった異なる要素を両立させることも可能です。高橋の場合は、毛筆を用いた強弱自在の描線が肝。マンガで通常用いる金属製のペンと比べて、毛筆は筆圧を敏感に感じ取り、描線の太さが繊細に変化します。その分、高い技量が要求されますが、うまく操れば絵に生気がみなぎります。この描線が、この世ならぬものたちに生命力を与えているのです。
他にも、水墨画のようにかすれさせた塗り方で、蜃気楼のような非実在感を醸し出すなど、高橋の原画には優れた創意工夫が詰まっています。来月5日から漫画ミュージアムで開催する原画展で、ぜひ間近に観察してみてください。
(専門研究員 表智之)
=MEMO=
「デビュー45周年 高橋葉介原画展」は2月5日から4月10日まで漫画ミュージアム6階「あしたのギャラリ―」にて。2月11日にはサイン会も。詳しくは下記リンク先、または093(512)5077[11:00~19:00・毎週火曜休館]まで。
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