2022年12月22日
(416)北九州国際漫画祭2022 台湾漫画史をフカボリ
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連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第416回
『西日本新聞』北九州版 2022年11月13日(日)朝刊 20面掲載
北九州国際漫画祭2022
台湾漫画史をフカボリ
アジアの玄関口として古くから栄えた北九州市。その歴史風土と、国境を越えて広がる漫画というメディアの特性を踏まえ、「漫画を通じた国際文化交流」をテーマに複数の展示やイベントを複合させ、漫画ミュージアムの冬季企画展として毎年開催している「北九州国際漫画祭」が、(11月)26日から始まります。
今年は、台湾における貸本屋と漫画の歩み100年を振り返る「台湾漫画史不思議旅行―貸本屋さんと漫画の100年―」がメイン企画。「貸本屋」とは安価な書籍レンタル店のことですが、日本では江戸時代から存在し、戦後から1960年代初頭に活況を呈したのち衰退していきます。
台湾における貸本屋は、1895年に始まる日本の植民地支配時代に端を発し、おおよそ日本と同様の歴史をたどるのですが、そこで流通していた漫画を見ると、日本統治の影響など、台湾の社会的・政治的な変動が色濃く表れています。
例えば統治時代、同時期に日本で親しまれていた「のらくろ」や「冒険ダン吉」が台湾でも読まれていたことが分かっています。時代が下り、政府による検閲制度が強化された1960年代に入ると、海賊版の日本漫画が大量に出回りました。92年に著作権法が改正されて以降は正規の単行本が流通するようになり、台湾の描き手による漫画作品も増加していきます。このように、台湾貸本屋と漫画の歩み100年を振り返ることは、つまり台湾の100年の歴史を振り返ることでもあるのです。
本展では、展示するさまざまな資料や映像を通して、台湾と日本の共通点と相違、そして現代の台湾における漫画文化の独自の発展をお伝えします。お楽しみに!
(学芸員 石井茜)
=MEMO=
企画展「北九州国際漫画祭2022」の詳細はこちらのページをご参照ください