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連載コラム『出会い 探検 漫画ミュージアム』第430回
『西日本新聞』北九州版 2023年3月5日(日)朝刊 14面掲載
陸奥A子ワールド
小倉北と門司で楽しむ

　寒波に震えた冬が過ぎ去り、いよいよ春の気配が増してきた今日この頃。北九州市漫画ミュージアムでは、この季節にぴったりな原画を集めた「収蔵作品展 陸奥A子 春のかおりに誘われて」を開催中です。

　北九州ゆかりの漫画家である陸奥A子先生のことは、このコラムでも度々紹介してきました。1970年代から80年代の少女漫画誌『りぼん』で、熱狂的な人気を獲得した陸奥先生。ほのぼのとした交流の中で生まれる誰かへのいとおしい気持ちや、ほのかな憧れといった感情を、ナチュラルでおしゃれなファッションと、かわいらしいお部屋・小物たちとともに丁寧に描き、少女たちの心を大いにときめかせました。

　この展覧会は2月16日に開幕しましたが、この会期設定には理由があります。ひとつに、開幕前日が陸奥先生の誕生日ということ。もうひとつに、2月18日、陸奥先生が地元企業とともに門司区に「陸奥A子ギャラリー花Café」を開店させたことから、その応援という意味も持たせました。過去の掲載誌や付録、そして最新作のイラストレーションまで展示するギャラリーの開店日には、多くのファンが全国から足を運んだとのことで、陸奥先生が作品を通して植えた「ときめきの芽」は、今も読者の心で育ち続けていることが分かります。

　当館の展覧会では、春らしいカラーイラストのほか、「花Café」から連想してお茶を囲むシーン、そして春の訪れにも似た「恋のときめき」を感じさせるシーンを展示しています。この芽吹きの季節、小倉北区と門司区それぞれで、陸奥A子ワールドをお楽しみください。

（学芸員・石井茜）

＝MEMO＝

「収蔵作品展 陸奥A子 春のかおりに誘われて」は5月21日（日）まで常設展示エリアにて開催中。「陸奥A子ギャラリー花Café」（門司区清滝五丁目1-4）は毎週土日の12時から17時までの営業です。